金子和史
北海道・知床半島沖で昨年4月に観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で死亡した甲板員曽山聖(あきら)さん(当時27)の両親=東京都=が、事故は国の船体検査が不十分だったことが原因だとして、国に計約1億800万円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。提訴は4日付。事故をめぐり、国の責任を問う訴訟は初めて。
事故を調査している国の運輸安全委員会によると、事故前に観光船の検査を実施した日本小型船舶検査機構(JCI)は、検査対象項目だった船首甲板部のハッチの開閉試験を省略して合格とした。同委は、ハッチのふたが密閉できずに海水が船底に入り込んだことが沈没原因とみている。
両親は訴状で、検査でハッチの不具合を発見して不合格としていれば、船は出航できず事故は起きなかったと主張。船舶安全法は国に代わってJCIが検査すると定めており、国には安全に航行できる能力のない船を検査に合格させた責任があると訴えている。
両親は3月、観光船の運航会社「知床遊覧船」と桂田精一社長にも、計約1億1900万円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こしている。
国土交通省は「訴状を受け取っておらず、コメントは差し控える」としている。(金子和史)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル